DXとは何か?中小企業における重要性について解説
DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が広く使われるようになりました。
しかし、関係するのは一部の大手企業だけであると思われている部分もあり、「DXに何の意味があって、どのように活用できるのか分からない」と感じる方も多いのではないでしょうか。 今回は、DXの基本概念と中小企業における重要性、さらに成功企業の具体例を通じて、中小企業がDXを導入するメリットとその一歩を解説します。ぜひ最後までお読みください。
そもそもDXとは
経済産業省の定めるDXは、以下の文言により定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
難しそうな言葉が並んでいますが、端的に言えば「市場に合わせて、データやデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務、組織風土を変革し、競争力を向上させる取り組み」のことを指します。
中小企業におけるDXの重要性
上記のDXの定義をよく読んでみても、やはり大企業だけがDXへの取り組みをしているように思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、中小企業にこそDXが重要となります。
なぜなら、中小企業が直面する課題に対する解決策となりうるためです。
中小企業が直面する課題
中小企業は、大企業と比較するとどうしてもリソースや予算が限られています。
そのため、例えば以下のような課題に対して策を講じることが難しいと感じられるでしょう。
・新規顧客の獲得難易度の上昇
・人手不足による業務の停滞
・競争の激化による価格競争
これらの課題については、大企業も頭を抱えています。それを解決するために、DXが有効な手段となります。
例として、上記3点に対しての対策を考えてみましょう。
新規顧客の獲得難易度の上昇
新規顧客の獲得はデータ分析を活用したマーケティングや顧客対応の強化により、自社製品の競争優位性を確立することでできる可能性があります。
顧客データや販売データを適切に管理できていれば、どういった商品がどういった方に売れているのかを分析できます。
大企業のターゲット顧客は広い傾向にありますが、中小企業ではターゲットを絞りきった販売戦略を行なうことで自社製品の独自性を打ち出すことができれば、新規顧客の獲得においても競争の優位性を確立できる可能性は充分にあります。
人手不足による業務の停滞
深刻な人手不足により業務が停滞しているという状況は、社会自体が人口減少しているため、様々な企業で課題となっています。
しかし、人手不足が起こっていたとしても、在庫管理や販売管理のデジタル化により、業務を効率化して時間を短縮することが可能です。
こういったデジタル技術は、大企業の予算があって初めて導入できると思われがちですが、昨今では実は安価になってきています。
極端なケースだと在庫や販売データを簡易なツール(例: Excel)を用いるだけで業務効率化が可能なケースもあります。
実際にデータの分析がされにくい要因として、「データの入力方法が人によって違う」「データの中の本来数値が入るべき場所にテキストが入っている」などの状況になっていることが挙げられることも多いです。
競争の激化による価格競争
大企業がAIやIoTの導入などによる大量生産や工場稼働率のモニタリングでコストカットができるのに対し、中小企業では難しい場面もあるかもしれません。
そのような場合に、価格競争に対してデジタル技術の導入での対策として考えられるのは、例えば、クラウド型システムを導入して費用を抑えることなどが挙げられます。
業種によってどのシステムが良いかは違いますが、月額数千円程度で利用できるものもあります。
高額なツールほど性能が良い傾向にあるのは確かですが、丁寧なデータ管理を行なうことで安価なツールでも業務コストを削減することができるケースもあります。
中小企業の成功事例
ここでは実際に中小企業がDXに成功した事例を紹介します。
SNSによるプロモーションにより新規顧客を獲得
見た目にこだわった商品開発を行なった飲食店では、その商品の写真がSNSで話題となり、認知度が一気に拡大し、新規顧客の獲得ができました。
開発の前に、自社商品はどのようなターゲットに売れているのかはもちろんのこと、そのターゲット層に訴求するためには、インターネット上でどのプラットフォームが良いか、そのターゲット層では何が流行っているのかといったところまで仮説と検証を繰り返しながらデータを収集したことが成功の要因となっています。
必要なものはSNSアカウントとデータ管理ツールだけです。
華やかに成功したように見えますが、考えなければならないのは、成功の背景には小さなトライアンドエラーを繰り返していることです。
問い合わせ管理の簡素化で業務を効率化し人手不足に対応
顧客からのお問い合わせデータが煩雑で、管理ができていなかったBtoBのある企業では、お問い合わせフォームを最低限まで削減することでデータも簡素化し、人手不足の中でも業務が滞らないように効率化しました。
データの簡素化において、フォームの質問項目を減らすだけでなく、各項目にあった「その他」の選択肢を全て削除し、自由記述の箇所を最後の1問だけに絞り込むことで、顧客の入力のストレスを軽減しながら、企業側のデータ管理上のエラーも防止できるようになり、顧客満足度の向上も同時に実現しています。
必要なものは既に持っているお問い合わせフォームだけです。
この事例では業務効率化、顧客満足度の向上、売上向上を同時に実現した奇跡に見えるかもしれませんが、削減前に、どの部分で離脱されているのか、本当に削減していい項目なのか、自由記述が与える影響はどんなものかを分析しながら少しずつ改修していったことは考慮しなければなりません。
クラウドシステム導入による価格競争対策
価格競争への対策事例ですが、その前に根本的な問題として生産にかかるコストが高いと価格を下げることはできません。
逆に言えば、コストカットを適切に行なうことにより、販売価格を下げることができます。
そこで、製造業のある企業では、安価なクラウド型のツールを導入することで、在庫管理を行なうことを決定しました。
在庫を適切に管理し、過剰に在庫を抱えないようにすることに成功し、コストを下げ価格に反映させることで、価格競争への対策を行ないました。
特筆すべき点は、徹底したデータ管理を定着させたことにより、なるべく費用のかからないツールを選定できたことです。
この背景には、データの入力規則を統一し、誰もが同じルールでデータ管理を行えるように業務プロセスや組織風土を変革したことが挙げられます。
それにより、なんでもできる高いツールではなく、性能こそ限られているものの最低限必要な機能が搭載できているツールを選定できています。
ここでもデータ管理において、小さなトライアンドエラーを繰り返し行なっています。
中小企業がDXを進めるために
上記の事例に共通しているのは、現状を分析しながら小さな改善を繰り返していることです。
一度に大きな変革を起こそうとするとリスクも大きくなるため、失敗した時の損失も大きくなってしまいます。
失敗が許容される程度の範囲内からスタートして、失敗しても大きな損失にはならないような変化を繰り返していくことが大切です。
また、組織風土としても、「うちのDXは失敗だった」と社内で言われないように失敗を許容できる文化を醸成していかなければ、DXを推進しようとする人がいなくなってしまいます。
さらに言えば「小さな失敗を許容する」「組織風土の変革」といったことは、大企業が実はあまり得意ではないことでもあります。
まずは些細に見えるような小さなことから始め、小さな成功体験を繰り返すことで、徐々にDXを推進させてみましょう。